家を建てるとき、多くの方が一度は耳にする「地鎮祭(じちんさい)」。
しかし実際には
・何をするのかよく分からない
・必ずやるものなの?
・費用はいくら?
と疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
私は神職として、これまで数多くの地鎮祭を奉仕してきました。
その中で感じるのは、施主の方のほとんどが
「人生で初めての地鎮祭」
ということです。
建て主の皆様は
「正直よく分からないけど、しないよりはした方がいいよね」
という気持ちで参列される方も少なくありません。
この記事では、神職の立場から
地鎮祭の意味や流れ、準備するものについて、初めての方にも分かりやすく解説します。
そもそも地鎮祭や上棟祭などの建築儀礼は、行なうべきことなのか。
結論
やっぱり行なうべき

我が家を建てることは人生において一大事です。
建築儀礼である地鎮祭には建主と建主のご家族だけではなく、建築会社や大工さん、あらゆる職人さんたちも参加して行われるのが一般的です。
家を建てる工程とその後の暮らしの平穏無事を願う重要な儀礼です。
地鎮祭とは?
地鎮祭とは、氏神様や土地に繋がりがある神様をお招きして、
・土地の神様に
- ここに建物を建てること
- 工事を始めること
を報告し、工事の安全と建物の繁栄を祈願する儀式です。
超簡単に言うと、
「これから、この土地を使わせていただきます。工事が無事と家の繁栄を見守って欲しいです」
と神様に報告する儀式です。
地鎮祭自体の歴史は結構古く、1300年以上前に完成したと言われている日本最古の歴史書である『日本書紀』にも地鎮祭のことが書かれています。
つまり、それよりも古い時代から今日まで脈々と行われてきた伝統儀式だと言えます。
地鎮祭は必ずやらないといけない?
結論から言うと、地鎮祭は必ず行わなければならないものではありません。
するかどうかは、施主の判断になります。
最近では
・費用を抑えるため
・宗教的な理由
などから、地鎮祭を行わない方もいます。
神社としても、必ず行わなければならないという決まりがあるわけではありません。
ただし、
・家づくりの大切な節目になる
・工事関係者と顔合わせができる
・「ここに家が建つ」という実感が湧く
という意味で、地鎮祭を行う方は今でも多くいらっしゃいます。
地鎮祭の日程の決め方
家族が参列できる日で大丈夫です。
都合の良い日を神社や施工会社に連絡して日程を決めて下さい。
ただ、土用の日、不成就日、三りんぼうの日は避けた方がいいかもしれません。
土用の日
この日は、土地の神様が土をイジられることを最も嫌う日と定められています。無視して行なうと神様が機嫌を損ね、祟りを引き起こしてしまう可能性があります。
不成就日
地鎮祭に限らず、婚礼関係や引っ越し願い事など、あらゆる事が始めると良くないとされています。
三りんぼう
上棟祭を行なってはいけないと言われている日ですが、近年では建築関連のことは全て良くないとされています。「この日に建築関連のことをやってしまうと三軒隣まで滅ぼす」と言われています。
代表的な日はこの3つです。
施工会社によっては、他にも独自に縁起が悪いと考えている日もあります。
地鎮祭の費用はいくら?
・お供え物
・相場(2〜5万円くらい)
・初穂料の金額は地域や神社によって異なります。
基本的に施工会社から金額を伝えられると思います。神社に問い合わせをすると「◯万円ですね」と答えてくれます。
神社によっては単に「お気持ちで。」と具体的な金額を伝えてくれないこともあります。
もし具体的な金額が分からなかった場合は、ネットで調べた地域の相場+1万円を加えた金額で大丈夫かと思います。
地鎮祭の流れ
地鎮祭の大まかな流れを紹介します。
修祓 神職が祭壇と参列者を祓い清める
献饌 すでに準備されているお供えものを捧げる。
降神の儀 神様をお迎えする
祝詞奏上 神様に工事の開始の報告をして安全祈願の祝詞を奏上する
散供 神主さんが敷地の四隅と中央(盛り土)に切麻
穿切の儀(うがちぞめの儀)
0設計者が鎌で「えい、えい、えい」と言いながら草を掴んで刈る動作で抜き取る
1盛砂を館主クワで「えい、えい、えい」と言いながら3回崩す
2盛砂を施工会社の代表者がスキで「えい、えい、えい」と言いながら3回崩す
※筆者が奉職している神社の地域は、個人宅で穿切の儀の0を行なうケースは少ないです。
鎮め物埋納 清めした鎮め物(木札)を土に埋める。
筆者が奉職している神社の地域では、穿切の儀と鎮め物埋納をすることは少ないです。
玉串奉奠 建主から玉串を祭壇にお供えして二礼二拍手一礼の作法でお参りする。
撤饌(てっせん)お供えした神饌を下げる。
昇神の儀 神様に帰ってもらう
直会(なおらい)参列者全員で神様にお供えしたお神酒や神饌をいただく。
以上の手順が一般的に行われる祭祀の内容です。地域や神社によって作法順番に違いがあります。
地鎮祭の服装
特に決まりは無いです。
フォーマルな服装が一般的と言われています。ただ地域的なこともありますし、正直なことを言うと筆者が行く地域は完全な私服でも問題はありません。
しかし、短パン・サンダルなどのラフ過ぎる服装は避けるべきです。
企業や市町村が行なう地鎮祭に参加する機会があるなら、必ずスーツで参列すべきです。
地鎮祭で準備するもの
神様に崇敬の気持ちを表し捧げる「初穂料」と祭祀に必要な神饌(お供え物)を用意します。
神饌の種類
米・酒・餅・魚(鯛)・卵・乾物・野菜・果物・菓子
神饌の準備は、施工会社が用意する場合もあれば、神社に依頼して用意してもらう場合もあります。もちろん、施主自身で準備しても問題ありません。
全て用意するのは難しい場合、米・酒・酒・乾物・野菜・果物だけでも大丈夫だと思います。
乾物と野菜、果物などは3種類ずつだとちょうど良いです。
少ないと寂しい雰囲気になるので、できる範囲で用意して欲しいです。
その他の祭壇を組むための机や神饌を置くための皿や三方なども、施工会社が用意してくれる場合と神社が用意してくれる場合があります。
なぜ地鎮祭を行うのか?
「地鎮祭って本当に必要なの?」と思う方もいるかもしれません。
地鎮祭は必ず行わなければならないものではありませんが、私は神主として意味のある儀式だと感じています。
家を建てるということは、その土地に長く住むということです。
その土地の神様にご挨拶をし、工事に関わる職人の安全を願う。そうした節目の儀式として地鎮祭が行われてきました。
たとえば、結婚を決めたときに相手のご両親へ挨拶に行くことがあります。
地鎮祭は、ある意味でそれと似ているかもしれません。
これからお世話になる土地に対して、「ここに住まわせていただきます」とご挨拶をする。
そうした気持ちを形にした儀式とも言えるでしょう。
「住み始めて最近良くないことが続いているな。」となってしまったら、嫌じゃないですか。
ただ、最近では地鎮祭の文化も少しずつ薄れてきています。
工務店の中には「地鎮祭は必要ない」と説明するところもありますし、自分たちの手で簡略化した形で行なってしまう人もいます。
しかし、長年神職をしている方からは、土地に関する不思議な話を聞くこともあります。
それが本当かどうかは分かりません。
ですが、そうした話を耳にすると、私は個人的に「地鎮祭は行っておいた方が良い」と感じています。
これから長く住む場所だからこそ、最初にきちんとご挨拶をしておく。
その意味で、地鎮祭は大切な儀式だと思っています。
セルフ地鎮祭について
SNSなどで時々「セルフ地鎮祭のやり方」といった情報を見かけることがあります。
しかし、米や塩、酒を土地に撒くだけでは、本来の意味での地鎮祭とは言えません。
地鎮祭のデメリットとして挙げられるのは、やはり費用だと思います。
たった数十分の儀式に数万円かかることに、抵抗を感じる方もいるかもしれません。
しかし地鎮祭は、単なる儀式ではなく祭祀です。
神様と人との間を取り持つ専門家として神職がおり、祭祀にも細かな作法や意味があります。
また、地鎮祭では建主の家の繁栄と、工事に関わる職人の安全を心を込めて祈願しています。
たとえば手術を受けるとき、医療免許を持った医師に依頼しますよね。
それと同じように、それぞれの分野には専門の役割があります。
地鎮祭は、これから家を建てる土地の神様にご挨拶し、工事の安全を祈る大切な行事です。
多くの人が関わって建てられる家だからこそ、正式な形でスタートを迎える意味は大きいと私は感じています。

地鎮祭 まとめ
地鎮祭は家族のためであり、関わる人達のための儀式です。
職人さん達、施工会社の担当者も正式な祭祀である地鎮祭を斎行することで、気合いが入った表情になります。わざわざ地鎮祭までして欠陥住宅を作る人は居ないと思います。
一生に一度だけ経験する地鎮祭をしてみませんか?
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
良い1日を。

